横浜FCが今治に2-1で勝った。
先制して、追いつかれて、それでも最後にもう一度勝ち越した。
決勝点は90+1分。伊藤槙人がつないだボールを、アダイウトンがゴールへ押し込んだ。
これだけなら、劇的な勝利だった、で終わってもいい試合なのかもしれない。
でも試合後、須藤大輔監督はこんな言葉を残している。
「この勝ちは、普通の勝ちではないと思います」
なぜ、普通の勝ちではなかったのか。
そこを追っていくと、いわき戦から続いてきたものが、一本の線になって見えてくる。
二つの修正
前節のいわき戦で、横浜FCは0-2で敗れた。
試合後に須藤監督が口にしたのは、「できるのにやらない」という厳しい言葉だった。
そして今治戦へ向けて修正したかったこととして、二つを挙げている。
ひとつは、ゴールへの迫力と仕掛ける気持ち。
もうひとつは、自分たちのフェーズではない時間帯を認め、そこでしっかりとはね返す強さだった。
ずっと自分たちの時間にできるわけではない。
相手がいる以上、押し込まれる時間もあれば、思うようにボールを動かせない時間もある。
そこで無理に自分たちの形へ戻そうとするのではなく、今は耐える時間だと認める。
そして、はね返す。
これは以前、須藤監督が話していた「二つ目の壁」にもつながっているように感じる。
攻撃だけでは勝ち切れない。
でも、守ることだけを考えていても、須藤監督が目指しているサッカーにはならない。
その両方を持つこと。
今治戦では、その一端が見えた。
再現性のある失点
ただ、すべてがうまくいったわけではない。
後半4分、横浜FCは同点に追いつかれた。
須藤監督は、この失点についてかなり気になる言葉を使っている。
「あれは再現性のある失点だと思っています」
再現性。
これまで須藤監督のコメントを追ってきて、何度も出てきた言葉だ。
ただし今回は、良いプレーの再現性ではない。
同じことを繰り返せば、また起こる可能性がある失点という意味で使われている。
横浜FCは前へ人数をかける。
選手がポジションを動かし、ローリングしながら攻撃する。
当然、ボールを失えばカウンターを受ける可能性も生まれる。
だからといって、その危険をなくすために前へ出ることをやめるのか。
須藤監督の答えは、はっきりしていた。
「それが怖くてこのサッカーはできないと思ってます」
そう。怖いは安牌を産むにちがいない。
だったら点を取りましょう
失点のリスクがある。
ならば安全なサッカーへ変える。
そういう話にはならなかった。
須藤監督は、ボールの失い方、失ったあとの距離、相手FWへの対応など、修正すべきところを具体的に挙げている。
自分たちがやろうとしているサッカーそのものを引っ込めるつもりはない。
むしろ出てきた言葉は、「だったら点を取りましょう」だった。
さらに、「こういう失点は必ず1点はあると考えなければいけない」とも話している。
だから1点では足りない。
2点、3点を取りにいく。
もちろん、失点しても構わないという意味ではないだろう。
防げるものは防ぐ。
失い方を改善する。
相手FWをどこで潰すのかも詰めていく。
それでも、リスクを恐れて自分たちのサッカーを小さくするのではなく、その先にあるリターンを取りにいく。
今治戦前に書いた「安牌ではなく前へ」という言葉が、ここでもつながった気がした。
折れなかった1-1
もうひとつ、今治戦で見逃したくない場面がある。
1-1になったあとだ。
先制した試合で追いつかれる。
しかも、自分たちがこれから修正しなければならない形からの失点だった。
嫌な流れになってもおかしくない。
それでも横浜FCは折れなかった。
須藤監督も、その姿を「選手が非常に成長している」と話している。
ここは結果以上に大きいのかもしれない。
良い時間に良いサッカーをするだけではなく、うまくいかなくなったあとに何ができるのか。
自分たちのフェーズではない時間を認める。
失点しても、そこで試合を手放さない。
そしてもう一度、ゴールを取りにいく。
試合前に掲げていた二つのテーマが、1-1になってからの時間にも表れていた。
やってるやつに転がる
そして90+1分。
最後に勝点3を引き寄せたのは、途中からピッチへ入った二人のベテランだった。
伊藤槙人からアダイウトン。
須藤監督は二人について、普段の練習から「120%」で取り組んでいると話した。
私たちが見ることのできるのは、基本的には試合だ。
誰が先発したのか。
誰がゴールを決めたのか。
誰が途中から入ったのか。
けれど監督が見ているのは、その前にある毎日の積み重ねでもある。
だからこそ、決勝点を振り返ったときに出てきた言葉が印象に残った。
「やっぱりやってるやつのところにボールは転がってくる」
もちろん、本当にサッカーボールが努力した人を選んで転がっていくわけではない。
それでも、90+1分にその二人が決勝点を生み出したという事実は、チームの中では大きな意味を持つのだと思う。
出場時間が長い選手だけではない。
若手だけでもない。
ベテランも日々の練習からやり続けている。
それが結果として見える形になった。
だから須藤監督は、この勝利を「普通の勝ちではない」と表現したのではないだろうか。
千葉寛汰の第一歩
そして、この試合ではもう一人、気になる選手がいた。
加入が発表されたばかりの千葉寛汰が、先発した。
須藤監督は、ストライカーらしい動き、強さ、上手さを見せていたとしながらも、
「彼はもっとできる」
と話している。
求めているのは「決定的な仕事」だという。
もっとボールを収める。
もっとシュートまで持っていく。
もっとシュートに貪欲になる。
加入したばかりで、まだ周囲も千葉の特徴を十分には分かっていない。
それでも先発で起用したところに、期待の大きさは感じる。
今回はゴールという結果にはつながらなかった。
しかし、「だったら点を取りましょう」というサッカーを進めていくなら、ストライカーに求められるものは分かりやすい。
千葉寛汰がそこにどう加わっていくのか。
最初の一試合で答えを出す必要はない。
むしろ「もっとできる」と言われたところから、見ていきたい。
次でもできるか
今治戦は2-1で終わった。
勝点3を取った。
劇的な決勝点もあった。
でも、この試合を一試合だけの物語として終わらせるのは、少しもったいない。
いわき戦では「できるのにやらない」と言われた。
今治戦へ向けては、安牌ではなく前へ出ることが求められた。
そして今治戦後には、
「だったら点を取りましょう」
という言葉が出てきた。
須藤監督がやろうとしていることは、はっきりと見えてきている。
今回の2-1を、須藤監督は「普通の勝ちではない」と表現した。
その言葉は、劇的な決勝点だけを指したものではないように思う。
練習から120%でやっているという伊藤槙人とアダイウトン。
途中から入った二人のベテランが、最後に勝点3を手繰り寄せた。
「やっぱりやってるやつのところにボールは転がってくる」
その姿をチーム全体で共有したいと、須藤監督は話している。
ならば、この「普通ではない勝ち」の先にあるものは何だろう。
ベテランだからできた、で終わらないことだと思う。
先発でも途中出場でも、若手でもベテランでも、誰がピッチに立っても同じように準備して、求められた仕事をする。
誰かが特別なものを見せて勝つのではなく、それがチームの中で当たり前になっていく。
それこそが、いつか横浜FCにとっての「普通の勝ち」になるのかもしれない。
次は富山戦。
今治でベテラン二人が見せたものが、次は誰のところに転がってくるのか。
そこを見てみたい。
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