宮崎との開幕戦を1-0で勝利した横浜FC。
開幕戦という難しさのある中で勝点3を取ったことは、もちろん大きい。
ただ、試合後の須藤大輔監督の言葉を追っていくと、勝ったことだけで次へ進もうとしているわけではないことが分かる。
ビルドアップには手応えがありながら、アタッキングサードの質には物足りなさがある。
良いポジションを取れていても、そこから違いを作るところまで求める。
そして今回、特に興味ある言葉があった。
「手前でミスるよりも奥でミスしろ」
百年構想リーグでは、「10回中10回」「次でもできるか」「当たり前のことを当たり前に」といった言葉を何度も聞いてきた。
積み上げてきたものを再現することを大切にしてきた監督が、今度はその先にあるチャレンジを求めている。
新しいシーズンの横浜FCは、少し違う段階へ進もうとしているのかもしれない。
勝ちながら修正する
宮崎戦について、須藤監督は「難しい試合になる」という想定通りだったと振り返っている。
前半はゴールキーパーを含めたビルドアップから相手をかいくぐり、シュートまで持っていけていた。
一方で、良い時間帯に得点を取り切れなかった。
クロスから二次攻撃、三次攻撃につなげる部分や、アタッキングサードでのコンビネーション、個の質にも物足りなさが残ったという。
それでも、難しい試合を耐え、体を張って守り、最後は勝った。
監督がその意味について語った「勝ちながら修正していける」という言葉が印象に残った。
開幕戦なのだから、完成しているはずはない。
課題が出ること自体は不思議ではない。
その課題を抱えながら勝点3を取れたからこそ、次の一週間を修正に使える。
これは長いシーズンを考えれば大きいと思う。
J1昇格を目指すシーズンで、毎試合すべてが思いどおりになるとは考えにくい。
うまくいかないものを抱えながら、それでも勝点を積み上げる。
宮崎戦の1勝には、そんな意味もあったように感じる。
当たり前以上を求める
今回のコメントで、宮崎戦そのもの以上に気になったのが、キャンプ前からのチームの変化について語った部分だった。
ユースとのトレーニングマッチ後、須藤監督は「全然ダメだった」と厳しい言葉を残していた。
そこからキャンプを経て、開幕戦まで来た。
監督は現在のチームについて、当時とは「雲泥の差」だという。
運動量が増えた。
強さも増えた。
立ち位置など、考えていることをピッチで表現する力も増えてきた。
百年構想リーグから追ってきた側としては、この変化は興味深い。
須藤監督はこれまで、できた一つのプレーだけを見るのではなく、それを繰り返せるかを見ているように感じてきた。
良いポジションを取れた。
良いプレーができた。
それで終わりではない。
「次でもできるか」。
その積み重ねを求めてきた。
今回、監督はさらにその先の言葉を口にしている。
「当たり前のことを当たり前にやるというのはすごく難しいけど、当たり前以上のことまでチャレンジしてもらいたい」
できるようになったことを繰り返すだけでは、もう足りない。
積み上げてきたものがあるからこそ、その上に新しいものを乗せようとしている。
そう考えると、新しいシーズンに入った横浜FCの現在地が少し見えてくる。
奥でミスしろ
では、「当たり前以上」とは何なのか。
監督はいくつか具体的な例を挙げている。
安全なパスだけを選ぶのではなく、一つ遠くへ飛ばしてみる。
逆サイドへ展開してみる。
自分で仕掛けてみる。
そして、そうしたチャレンジによって起きるミスについても「どんどんやってもらいたい」と話している。
ここは少し意外だった。
これまで再現性を大切にしてきた監督だからこそ、ミスを減らす方向へ進むのかと思っていたからだ。
けれど、そうではなかった。
監督が話しているのは、無謀なプレーを許すということではないのだと思う。
一度でも遠くへのパスを見せれば、相手はそこを警戒する。
仕掛ければ、次は相手の対応が変わる。
ミドルシュートを打てば、引いていた相手が前へ出てくるかもしれない。
そうなれば、今まで積み上げてきたプレーが逆に使いやすくなる。
チャレンジには、成功したか失敗したかだけでは測れない意味がある。
そこで出てきたのが、
「手前でミスるよりも奥でミスしろ」
という言葉だった。
かなり須藤監督らしい表現だと思う。
ミスをしないことを最優先にして、自分たちの可能性まで小さくしてしまうのではない。
失敗するなら、相手に何かを意識させる失敗をする。
今季の横浜FCを見るうえで、覚えておきたい言葉になった。
シュートを打つほうを選ぶ
そして、この話を聞いて前節の宮崎戦をもう一度思い出した。
横浜FCはシュートを打った。
もちろん、シュートは打てばいいというものではない。
監督自身も「点を取りきる」「枠にボールを入れる」という部分には物足りなさを感じている。
それでも前回の記事で、私はシュートを打ったという数そのものを前向きに見たいと書いた。
得点するためには、まずシュートを打たなければ始まらないからだ。
今回、須藤監督も選手たちに、
「シュートを打たないよりもシュートを打つほうを選択してくれ」
と伝えているという。
この言葉を読んで、宮崎戦で感じたことが少しつながった。
枠を外せば記録上は一本のシュートで終わる。
止められるかもしれない。
しかし、それを見た相手は次から同じようには守れないかもしれない。
一歩前へ出るかもしれない。
その一歩によって、別の場所が空くかもしれない。
シュート一本にも、その先がある。
だから今季は、シュート数だけでなく、「そこで打つことを選んだか」というところも見てみたい。
入ったか、入らなかったか。
その結果だけでは残らないものがありそうだ。
大観衆の前で見せるもの
そして次は、MUFGスタジアム(旧:国立)の大舞台で磐田と対戦する。
チケットが完売したと聞いて、あらためてこの試合への注目度の高さを感じた。
まだシーズンは始まったばかりだ。
それでも、これだけ多くの人が集まる試合がいきなりやってくる。
一人の横浜FCサポーターとしても、単なるリーグ戦の一試合とは少し違うものを感じてしまう。
須藤監督は、この舞台で「インプレッシブサッカー」を多くの人に見てもらいたいと話している。
面白いのは、その中身だ。
華麗なパスや驚くようなプレーだけではない。
体を張った守備。
体を張ったボールキープ。
ライン際まで諦めずに追う姿。
一つのボール、一つのゴールへ向かう姿まで含めて、人を勇気づける試合をしたいという。
磐田についても、秋葉忠宏監督が作るチームの「熱さ」を警戒し、球際、走る、勝負へのこだわりという土俵でも負けてはいけないと話している。
まず、走る。
戦う。
球際へ行く。
これまで何度も聞いてきた「当たり前」をやり切る。
そのうえで、遠くへ一本飛ばす。
逆へ展開する。
仕掛ける。
シュートを打つ。
失敗を恐れず「当たり前以上」へ踏み出す。
おそらく、今度の試合で私が見たいのはそこなのだと思う。
大観衆が集まる舞台だからこそ、勝敗だけではなく、横浜FCがこれからどんなチームになろうとしているのかを見てみたい。
百年構想リーグでは、須藤監督が何を大切にしているのかを追ってきた。
今は、その輪郭がかなり見えるようになった。
だからこれからは、その考え方がどう勝利につながり、どうJ1昇格への道になっていくのかを追っていきたい。
「手前でミスるよりも奥でミスしろ」。
その言葉を頭の片隅に置いて見る大観衆の一戦は、いつもとは少し違って見える気がしている。


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