2026-27シーズンの開幕戦。
横浜FCはテゲバジャーロ宮崎を1-0で下した。
まずは、勝った。
新しいシーズンの最初の試合で勝ち点3を取れたことを、素直に喜びたい。
前半は横浜FCが何度も宮崎ゴールへ迫り、シュート数は14本。
一方で、その時間帯にゴールネットを揺らすことはできなかった。
後半になると宮崎に押し込まれる時間も増え、横浜FCにとって決して簡単な90分ではなかった。
それでも、最後まで1点を守りきった。
試合後、須藤大輔監督が何度も語っていたのが「勝負どころ」だった。
百年構想リーグを通して追ってきた横浜FCが、新しいシーズンの最初の90分で何を見せたのか。
1-0という結果の中には、これまで積み上げてきたものと、これから積み上げなければならないものの両方が見えていたように思う。
14本打ったことを見たい
前半のシュート数は14本。
それだけ打ちながら得点できなかった、と見ることもできる。
実際、須藤監督は試合後、「良い時間帯に最悪でもゴールマウスにボールを運ぶ」ことを修正点として挙げている。
枠を外せば、そこで攻撃は終わる。
クロスをGKにキャッチされても、次のチャンスにはつながらない。
枠へ飛べばGKが弾くかもしれないし、相手DFに当たればこぼれ球が生まれるかもしれない。
そこからセカンドチャンス、サードチャンスへつなげていく。
前半だけで14本打った。
シュートを打たなければ得点には結びつかない。
枠を外すこともあるし、止められることもある。
それでも、まずシュートまで持っていかなければ何も起こらない。
だから今回は「14本も打ったのに入らなかった」ではなく、「14本打てるところまで何度も持っていった」と私は見たい。
監督は当然、その先を求める。
この14本を失わず、その一つひとつをもう少しゴールへ近づけていけるのか。
次の楽しみにしていきたいと思う。
勝負どころを共有する
須藤監督は試合前、選手たちにこう伝えていたという。
「勝負どころを全員で共有しましょう」
得点を取るという勝負どころでは、なかなか仕留められなかった。
それでも、試合には別の勝負どころがやってくる。
後半、宮崎の時間になったときだった。
体を張って守る。
味方をカバーする。
ゴールを守る。
ボールを奪いにいく。
須藤監督は、そこに「相当なアラート感」を感じていた。
さらに印象に残ったのが、「国籍を問わず、年齢を問わず」という言葉だった。
誰か一人が頑張って守ったという話ではない。
チーム全体が、今は何をしなければならない時間なのかを共有していた。
攻める時間には攻める。
耐える時間には耐える。
90分間ずっと自分たちの思い通りに進む試合など、そう多くはない。
だからこそ、自分たちの時間ではなくなったときに何ができるのか。
開幕戦の1-0には、そこに一つの答えがあった。
ハーフタイムで責めなかった
もう一つ興味深かったのが、ハーフタイムの話だった。
前半だけで14本。
それだけチャンスを作りながら得点できなければ、「あれだけチャンスがあったのに」と言いたくもなりそうだ。
しかし須藤監督は、それを「あえて」言わなかったという。
確認したのは、ビルドアップで相手の圧を受けた場面での「ボールの出口」と「ボールの受け方」だった。
そして、百年構想リーグで経験した試合についても選手たちと共有した。
攻めている。
チャンスも作っている。
それでも隙を与え、一発で失点する。
そんな試合があった。
百年構想リーグで起きたことが、新しいシーズンになったからリセットされるわけではない。
うまくいかなかった経験も持って開幕戦に入っている。
だから、決められないことだけに意識を向けるのではなく、同じ失敗を繰り返さないことを確認する。
そして実際に、横浜FCは1-0で守りきった。
須藤監督自身も、これを「百年構想リーグからの上積み」と表現している。
これまで監督が繰り返してきた「次でもできるか」「再現性」といった言葉。
その積み上げは、攻撃の形だけではないのかもしれない。
うまくいかない時間にも、やるべきことを共有できる。
それもまた、繰り返せるようにしていくものなのだと思う。
崩れたバランス
もちろん、勝ったからすべてがうまくいったわけではない。
66分にはジョアン・パウロが投入され、アダイウトン、ルキアンとともにブラジル人3人が前線に並んだ。
個人として相手に脅威を与える場面はあった。
一方で須藤監督は、その時間について「少しバランスを崩した感は正直ありました」と振り返っている。
ここも、この試合で気になったところだった。
前に強い選手を並べれば、それだけで攻撃が強くなるわけではない。
アダイウトンの背後へのランニング。
ルキアンのポストプレー。
それぞれにできることがあっても、周りがそれをどう使うのか。
逆に彼ら自身が周りとどうかかわるのか。
そこがつながらなければ、チームとしての攻撃にはなりにくい。
だから最後に投入されたのが岩崎亮佑だった。
監督が求めた役割は「コンダクター」であり、「バランサー」。
前線と後方をつなぐ潤滑油だった。
派手に前へ出る選手だけではなく、ボールの出口を作り、人と人をつなぐ選手も必要になる。
誰が点を取るのかだけではなく、誰がチームをつないでいるのか。
今季を見るうえで、そんなところにも目を向けてみたくなった。
次は分厚い攻撃へ
そして、須藤監督はすでに次のテーマを口にしている。
「分厚い攻撃」だ。
宮崎戦ではシュートまで持っていけた。
次は、それを枠へ運ぶ。
GKが弾けば、もう一度拾う。
DFに当たれば、そのこぼれ球を狙う。
一度の攻撃を一度で終わらせず、セカンドチャンス、サードチャンスまで続けていく。
開幕戦で出た14本という数字と、監督が求める「分厚い攻撃」は別々の話ではないと思う。
14本打てたものをなくす必要はない。
その14本の先に、もう一つ攻撃を重ねていく。
そう考えると、次節の磐田戦で見るところも少し見えてくる。
シュートが何本だったか。
もちろん、それも気になる。
でも、そのシュートのあとにもう一度横浜FCの攻撃が続いているか。
そこを見てみたい。
開幕戦で残ったもの
1-0。
開幕戦としては、これ以上ない結果になった。
ただ、この試合で一番残ったのは、勝ち点3だけではない。
前半に14本のシュートを打ったこと。
決められなくても焦点を失わなかったこと。
宮崎の時間になれば、全員で守ることへ切り替えたこと。
そして百年構想リーグで経験した失敗を、同じ失敗にしなかったこと。
開幕前、須藤監督が掲げる「凡事徹底」が、どんな形でピッチに現れるのかを見てみたいと思っていた。
その最初の答えが、この1-0だったのかもしれない。
もちろん、まだ一試合だ。
ブラジル人3トップになったときのバランスなど、これから整理していかなければならないものも見えた。
だから、完成したとは思わない。
むしろ面白いのはここからだ。
百年構想リーグで積み上げたものを持って始まった2026-27シーズン。
須藤監督が描くJ1昇格への道は、まず「勝負どころを共有して勝ちきる」という一歩から始まった。


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