横浜FCが新潟を5-0で破った。
フリーキックから先制し、後半には4得点。
最後まで失点を許さず、クリーンシートで試合を終えた。
スコアだけを見れば、何も言うことのない大勝である。
それでも須藤大輔監督は、試合後のコメントでこう語っている。
「次に新潟とやったときに同様の結果が出せたときが、本当の5-0の意味がある」
これだけの勝利を収めても、見ているのは次だった。
ただ、先のことを考える前に、今日は喜んでいい。
鳥栖戦では追いつかれたあとに二の矢、三の矢を放ち、もう一度勝ち越した。
ルヴァンカップの琉球戦では、試合をコントロールするためにピッチ上で考える姿が見えた。
その二つの試合で得たものが、新潟戦では5つの得点と無失点という大きな結果になって現れた。
5-0の前にあった時間
最終的な得点差とは違い、前半はどちらへ転んでもおかしくない展開だった。
新潟は横浜FCのディフェンスラインまで強く出てこない。
横浜FCは比較的自由にボールを持てたが、そこから先へ入っていくところで苦労した。
須藤監督がこの試合のポイントとして挙げたのは、「4-4-2で構えてくる相手にどう侵入していくか」だった。
ディフェンスラインでボールを持てても、それだけではゴールへ近づけない。
相手の2列目の背後へ、どのようにボールと選手を送り込むか。
横浜FCにとっては、以前から抱えていた課題でもある。
前半途中までは攻撃が引っかかり、ボールを失ったところから新潟に決定機を作られた。
横浜FCのシュートは4本。
須藤監督も「少ないですよね」と振り返っている。
5-0という結果から試合を振り返れば、最初から横浜FCが圧倒していたように見えるかもしれない。
しかし、0-0の時間には新潟へ流れが傾く可能性があった。
先制したあとにも、まだ相手を突き放せる保証はなかった。
だからこそ、フリーキックから得た1点は大きかった。
うまくいかない時間を失点せずに過ごし、自分たちの形で試合を動かす。
その1点によって、横浜FCは焦れずに続けることができた。
焦れずに動かした先
すぐに相手を崩せなくても、横浜FCはボールを動かし続けた。
その積み重ねによって、新潟の守備には少しずつ変化が生まれていく。
横へのスライドが遅れ、選手同士の間に入れる場所が見え始めた。
後半に入って10分を過ぎるころには相手の足が止まり、そのズレはさらに広がっていったという。
後半に見えた空間は、偶然空いたものではない。
前半からボールを動かし、新潟の選手を何度も横へ動かした。
その時間があったからこそ、後半に出口が見つかった。
前半から小倉選手が両サイドの高い位置へ流れ、シャドーも立ち位置を変えた。
ルキアンが背後へ走っても良いボールが入らない。
その原因を、須藤監督はシャドーとの距離に見ていた。
左のシャドーが反対側まで動いてもいい。
味方と一度位置が重なっても、そこで数的優位を作ればいい。
動かない相手に対し、こちらが動くことでフリーの選手を生み出そうとした。
もちろん、この方法がどの相手にも通用するわけではない。
それでも、この日の新潟に対しては、その修正が前線の孤立を解消する一つの答えになった。
試しながら動かした前半と、そこで見つけた出口を使った後半。
5得点は後半になって突然生まれたのではない。
少しもどかしく見えた前半も、後半に試合を動かすための時間だったのだと思う。
「1-0だぞ」
ハーフタイムに須藤監督が選手へ伝えた言葉も印象に残った。
これまではリードしていても、「0-0の気持ちで行け」と送り出していたという。
しかし、この日は違った。
「あえて『1-0だぞ』と強調した」
自分たちが1点をリードしている。その状況を全員で認知したうえで、2点目、3点目を取りにいくように伝えた。
リードを忘れて最初からやり直すのではない。
自分たちが積み上げた1点を土台にして、試合を次の段階へ進める。
この違いは大きい。
今までの横浜FCには、自分たちの流れになったところでカウンターやミスから失点し、突き放せるはずの試合を難しくしてしまうことがあった。
新潟戦にも危ない場面はあった。
それでも失点をゼロに抑え、相手の足が止まり始めた時間を逃さず、得点を重ねた。
鳥栖戦を前に、須藤監督は「はい、来たね」と全員が勝負どころを感じ取れる状態を求めていた。
鳥栖戦では、追いつかれたあとにもう一度前へ出て、勝ち越し点を奪った。
そして新潟戦では、1-0から2点目、3点目へ進み、さらに得点を積み重ねた。
この日は誰かが「はい、来たね」と声に出すまでもなかったのかもしれない。
相手のスライドが遅れたこと。足が止まり始めたこと。
自分たちがもう一段、前へ出られること。
その“勝負どころ”を、ピッチにいる全員が共有できたからこその5-0だった。
守らなかった1点
1点をリードした横浜FCは、その1点を守るために後ろへ下がらなかった。
むしろ、ディフェンダーまで相手のペナルティーエリアへ入っていった。
前節の鳥栖戦では、センターバックからセンターバックへつないで得点が生まれた。
新潟戦でもディフェンダーが得点し、ウイングバックもゴールを決めている。
須藤監督は、ディフェンダーが攻撃参加することについて「ハイリスクよりもハイリターンを取っている」と表現した。
当然、後ろの選手が前へ出れば、ボールを失ったときの危険は大きくなる。
それでも、怖がって攻撃へ行かないという選択はしない。
前線の選手だけに得点を任せず、ウイングバック、センターバック、ボランチもゴール前へ入っていく。
得点できる場所と選手が増えれば、相手は守る対象を絞れなくなる。
前線の選手も、今まで以上にプレーしやすくなるはずだ。
これは無謀に人数をかけるという話ではない。
前へ出た選手の後ろで、誰がカウンターに備えるのか。ボールを失った直後にどこで奪い返すのか。
奪い返せなかったとき、どの距離感と人数で相手の前進を止めるのか。
攻撃参加を続けるためにこそ、その後ろを整える必要がある。
5得点の中に横浜FCの積極性が表れ、その裏側に次の修正点も残った。
その両方が見えた試合だった。
5-0でも残った課題
須藤監督は大勝のあとにも、修正すべき点を具体的に挙げている。
前半のシュート4本は少ない。
シュートで終わること。
クロスを上げきること。
攻撃を中途半端に終わらせず、相手に良い状態でカウンターを始めさせないこと。
そして、ボールを失った直後の「ゾーン1」で奪い返すこと。
その後ろにある「ゾーン2」「ゾーン3」では、カウンターに対応できる距離感と人数を保つこと。
試合終盤には、全体が少し間延びした時間もあった。
5-0で勝ったのだから、今日はすべてよかった——では終わらせない。
ただし、これは大勝を割り引くための反省ではないと思う。
ディフェンダーを含めて、もっとアグレッシブにゴール前へ出ていく。
その攻撃を今後も続けるために、失ったあとの守備を整える。
良かった部分を消して安全な形へ戻すのではなく、良かった部分をさらに伸ばすために、その周囲を整えていく。
須藤監督が求めているのは、そういう修正なのだろう。
本当の5-0は次にある
5-0という数字は、横浜FCが一つずつ階段を登っている証だと須藤監督は語った。
この試合だけを見れば、新潟との間に大きな力の差があったように感じる人もいるかもしれない。
しかし、試合の流れをたどれば、0-0の時間には新潟へ流れが傾く可能性があった。
1-0になったあとにも、横浜FCには甘さが残っていた。
その時間を無失点で越え、焦れずにボールを動かし、相手にズレが生まれたところを逃さなかった。
だから、この5-0には意味がある。
山形戦では、やるべきことを続けられずに今季初黒星を喫した。
鳥栖戦では、追いつかれたあとに二の矢、三の矢を放った。
琉球戦では、流れに応じて自分たちで考え、試合をコントロールした。
新潟戦では、それらの経験が一本につながったように見えた。
それでも、須藤監督が確かめたいのは「一度できたか」だけではない。
次に同じように構える相手と向き合ったときも、焦れずに動かせるか。
相手の変化を感じ取り、自分たちで出口を見つけられるか。
1点を取ったあとに勝負どころを共有し、2点目、3点目を取りにいけるか。
攻撃へ人数をかけながら、その後ろでカウンターへの備えを作れるか。
そして、次に新潟と戦ったときにも、同じように自分たちの力を出せるか。
5-0という数字は、すでに記録として残った。
だが、この勝利が一過性の大勝だったのか。
それともJ1昇格へ向かう横浜FCの力が表れた試合だったのか。
その答えは、これからの試合で決まる。
だから今は、この大勝を思いきり喜びたい。
そのうえで、次に同じ壁が現れたとき、横浜FCがもう一度、自分たちで出口を見つける姿を待ちたい。
本当の5-0は、そのときに完成する。
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