横浜FC、福岡撃破でつながった3試合の積み上げ|須藤監督が語る「導火線の火」

天皇杯福岡戦でゴールを喜び、両手を広げてベンチへ走る横浜FCの選手と駆け寄る仲間たち。背景にはトーナメント表。 横浜FCノート

天皇杯3回戦で、横浜FCがJ1のアビスパ福岡を1-0で破りました。

天皇杯ベスト16進出は10年ぶり。

天皇杯でJ1クラブに勝利したのは19年ぶりだそうです。

もちろん、それだけでも十分にうれしい結果です。

ただ、須藤大輔監督の試合後のコメントを読んでいると、今回の勝利にはもう一つの意味があるように感じました。

富山戦で追いつかれ、岐阜戦では前半に苦しみ、八戸戦では勝ちながらも新しい課題が残った。

それぞれの試合で見えてきたものが、福岡戦で一つにつながったのではないでしょうか。

そして、この勝利をつかんだのは、普段リーグ戦で出場機会の少ない選手たちを中心としたメンバーでした。

中2日で迎える大分戦へ、横浜FCは何を持ち帰ることができたのか。

今回は、試合前後の須藤監督の言葉から考えてみたいと思います。

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この記事を書いた人|たつ

横浜FCを1999年から応援しているサポーター。

試合を追いながら感じたことを記事にしています。
戦術・採点ではなく、試合の違和感や変化、クラブを追う楽しさをサポーター目線で伝えています。

19年ぶりのJ1撃破

J1の福岡を相手に、駒沢直哉選手のゴールで先制した横浜FC。

その1点を最後まで守り切り、天皇杯4回戦への進出を決めました。

福岡には個人能力の高い選手がいます。

須藤監督も試合前から、特に前線の選手たちの力を警戒していました。

一方で、こんなことも話しています。

「我々の目標はJ1で定着、J1でタイトルを取ることにありますから、この相手にどれだけできるかというのは、我々のすごく大事な指針になると思っています」

J1昇格を目指す横浜FCにとって、現在のJ1クラブと戦うことには、勝ち負け以外の意味もあります。

自分たちが取り組んでいることは、上のカテゴリーでも通用するのか。

その問いに対して、今回は勝利という結果を残しました。

ただ、監督が試合後に語ったのは、J1に勝ったという喜びだけではありません。

むしろ、そこに至るまでの試合を振り返りながら、チームが何をできるようになったのかを丁寧に説明していました。

今回の1-0は、突然生まれた勝利ではなかったようです。

富山から続く修正

須藤監督は福岡戦を振り返り、富山戦、岐阜戦、八戸戦の3試合を挙げています。

富山戦では、3-1とリードしながら後半に追いつかれました。

守備が間延びし、相手の攻撃を止められなくなったことが課題として残りました。

続く岐阜戦では、今度は前半にボールがうまく動かず、後半になってようやく自分たちらしい攻撃ができるようになりました。

そして八戸戦。

富山戦の反省を生かして守備のコンパクトさを保ち、2-0で勝利しました。

しかし、試合前の会見で須藤監督は、その八戸戦にも満足していませんでした。

後半は2点を守ろうとする意識が強くなり、ボールを持つ勇気が足りなかった。

そこで山田康太選手と横山暁之選手を投入してボールを動かせるようになったものの、今度はゴールへ向かわなくなったといいます。

守備を修正すれば、攻撃に課題が出る。

ボールを持てるようになれば、今度は前へ進めなくなる。

一つできるようになったからといって、すべてが解決するわけではありません。

そんな八戸戦を振り返り、監督は「もう一個上に行きたいね」と話していました。

そして迎えた福岡戦。

試合後には、富山、岐阜、八戸の経験を踏まえて、こう語っています。

「それら3試合の総括として、非常にコレクティブな試合ができたと思います」

別々に見えていた課題が、少しずつ一つの戦い方へと結びついてきた。

今回の勝利には、そんな積み上げが見える気がします。

攻撃するための守備

八戸戦の前、須藤監督は守備について一つの考え方を説明していました。

基本はハイプレス。

ただし、どんな状況でも前から奪いに行けばいいわけではありません。

富山戦では、チーム全体が間延びした状態でも前へ出ようとしたことで、ボランチが広いスペースを守らなければならなくなっていました。

そこで八戸戦に向けて取り組んだのが、コンパクトな守備と、ボールを奪いに行くタイミングの共有でした。

「いつ行くのか、いつ止めるのか」

そして、監督はもう一つ大切なことを話しています。

「あくまで『攻撃をする時間を作るための守備だよ』」

この言葉が、福岡戦の内容とつながります。

福岡戦では、最後は相手に押し込まれながら守り切る展開になりました。

しかし監督は、最後まで足が止まらなかった理由の一つとして、前半や後半の序盤にボールを持つ時間をつくれていたことを挙げています。

最初から守り切ることだけを考えていたわけではない。

自分たちでボールを動かし、攻撃する時間をつくる。

その時間があるからこそ、守備にも力を残せる。

守備と攻撃を別々に考えるのではなく、互いにつながったものとして考えているのでしょう。

福岡戦の終盤だけを見ると、守備で耐えた試合という印象が残るかもしれません。

けれど、その守備を支えていたのは、それ以前に自分たちでつくった攻撃の時間でもあった。

ここは今回、特に面白いと感じたところです。

終わらせず、進める

福岡戦で1-0とリードして迎えたハーフタイム。

須藤監督が選手たちに伝えたのは、単に1点を守り切ろうという話ではありませんでした。

「『終わらせるか』ではなく、『進めていくか』、です」

この表現が印象に残りました。

八戸戦では、リードを守ろうとする意識が強くなりすぎました。

その反省があったからこそ、福岡戦では1-0という状況でも、次の得点を狙う姿勢を失わないことが求められていたのでしょう。

ただし、攻撃に人数をかければいいという話でもありません。

チームが間延びしないようにしながら、今何をすべきかを共有する。

攻めるときは攻める。

相手がボールを持てば、全員で守る。

その切り替えを90分の中で続けていくことが、監督の言う「進める」ということなのかもしれません。

もちろん、課題がなくなったわけではありません。

監督は試合後、カウンターから2点目を奪うチャンスがあったことにも触れています。

八戸戦でも2-0ではなく3-0にしたかった。

福岡戦でも1-0で終わるのではなく、もう1点を取って決着をつけたかった。

勝てたからそれでいい、とは考えていないようです。

それでも、富山戦でリードを失ったチームが、八戸戦では守り切り、福岡戦ではさらに攻撃する姿勢を持ちながら勝ち切った。

結果だけでは見えにくいですが、少しずつ前へ進んでいるように感じます。

今何をすべきか

福岡戦の終盤、横浜FCは守り切る戦いを選びました。

須藤監督は、その時間帯について次のように語っています。

「本当に『守りきるぞ』という共有が非常にできていました」

そして、直近の試合でもここまで意思を共有できた試合はなかったと振り返りました。

ここで大切なのは、守備的に戦ったこと自体ではないと思います。

攻撃する時間には攻撃する。

ボールを持つ時間には、自分たちで試合の流れをつくる。

そして最後に守り切る必要があるなら、全員がその判断を共有する。

八戸戦では、守る意識が強すぎて攻撃へ向かえない時間がありました。

福岡戦では、攻撃する姿勢を保ちながら、必要な場面では全員で守ることができた。

同じ「守り切った勝利」でも、その中身は少し違っていたのではないでしょうか。

須藤監督が繰り返してきた「今何をすべきか」という言葉。

これまでは、その判断をそろえること自体が課題として語られていました。

今回は、それがピッチの上で表れたと監督自身が感じています。

選手がそれぞれ頑張るだけではなく、同じ方向を向いて90分を戦う。

その姿が、ようやく一つの形になってきたのかもしれません。

ピッチに立つ準備

今回の勝利でもう一つ見逃せないのが、普段リーグ戦で出場機会の少ない選手たちの活躍です。

熊倉弘貴選手は左CBで先発しました。

須藤監督が期待したのは、左足から繰り出すキックの質でした。

左サイドの佃颯太選手やアダ選手の特徴を生かす配球、逆サイドへの斜めのボール。

ただ守るだけでなく、攻撃の起点としての役割も求められていたことが分かります。

また、岐阜戦では中央を務めた秦樹選手を右CBに置き、林賢吾選手を中央へ配置しました。

秦選手には、より自由なスペースでボールを引き出し、攻撃を円滑にする役割。

林選手には、対人の強さを中央で発揮する役割。

若い選手たちを単に起用するのではなく、それぞれの特徴をどう生かすかまで考えられていました。

そして決勝点を挙げた駒沢直哉選手。

怪我から復帰して2試合目でのゴールでした。

その得点について、監督は養父雄仁コーチがデザインしたセットプレーだったと説明しています。

さらに、駒沢選手の成長には吉武剛IDPコーチの働きがあったことにも触れていました。

試合に出ていない時間、怪我でプレーできなかった時間。

その間にも選手たちは準備を続けていたのでしょう。

そして、それを支えてきたコーチたちがいます。

試合前、須藤監督はターンオーバーについて聞かれ、「どんなメンバーが出てもやってくれると、我々は本当に信じています」と語っていました。

福岡戦では、その言葉を結果で示すことができました。

出番が来たから突然力を発揮したのではなく、出番が来るまでに積み上げてきたものがあった。

そんなふうに考えると、今回の勝利がまた違って見えてきます。

誰が出ても戦える

須藤監督は試合後、チームの雰囲気についても語っています。

途中から若い選手が入っても、普段リーグ戦に出ている選手が入っても、全員から勝利への気概を感じたといいます。

さらに、スタンドから試合を見守っていた選手たちについても、一緒に戦っている雰囲気があったと話していました。

「本当に素晴らしいチームになってきています」

監督のこの言葉には、単に試合に勝ったこと以上の喜びがあるように感じました。

百年構想リーグから、須藤監督は選手たちに出力や再現性を求め続けてきました。

できることを一度だけ見せるのではなく、次の試合でもできること。

そして、それを特定の選手だけに頼らず、チーム全体で実現すること。

今回の福岡戦では、普段リーグ戦に出ていない選手たちが、J1を相手に自分たちのサッカーを表現しました。

もちろん、これだけで誰が出ても同じように戦えるようになったと断言することはできません。

それでも、目指している方向へ進んでいることを感じられる勝利だったと思います。

リーグ戦を戦う選手たちと、カップ戦で出場機会を得る選手たち。

その間にあるものが、単なるレギュラーと控えという関係ではなくなってきているのかもしれません。

誰かの成長が、ほかの誰かの刺激になる。

誰かが結果を出すことで、チーム全体に自信が広がる。

長いリーグ戦を戦い、J1昇格を目指すうえで、こうした広がりは大きな意味を持つはずです。

導火線の火

福岡戦の試合後、須藤監督はこんな言葉を残しました。

「リーグ戦がまたすぐに来ますが、そこに、導火線に火を付けたい。本当に火はついてます。この火を、今度は消さないように、もっと繋げていきたいと思っています」

中2日で迎える大分戦。

この短い時間の中で、チームは再びリーグ戦へと戻ります。

福岡戦で活躍した選手たちの姿を、普段リーグ戦に出ている選手たちも見ていました。

監督は、その姿が彼らにとっても勇気や自信につながっているのではないかと話しています。

確かに、チームメートがJ1相手に堂々と戦い、勝利をつかんだことは、何かを感じさせる出来事だったのではないでしょうか。

ただし、福岡に勝ったから大分にも勝てるという単純な話ではありません。

富山戦で見えた課題を岐阜戦、八戸戦へとつなぎ、福岡戦で一つの形にしたように、次の試合でも何を積み上げられるかが問われます。

そして今回、火をつけたのは普段リーグ戦で出場機会の少ない選手たちでした。

その火を、今度はリーグ戦の選手たちが受け取る番です。

19年ぶりのJ1撃破。

その結果はもちろん、横浜FCにとって大きな出来事です。

けれど、この勝利がチームをどこまで押し上げるのかは、まだこれからの話です。

須藤監督が言うように、火はもうついています。

大分戦では、その火がどんな形でピッチに表れるのか。

福岡戦の余韻を感じながら、次の90分を見てみたいと思います。

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